ザ・ノンフィクション 父と息子とはぐれた心 ~引きこもった僕の1年~
大学に通っていた息子(24歳)が、卒業間近に突然、自宅に引きこもった。真っ白な顔でゲームに没頭し、昼夜逆転の生活を繰り返す息子…悩んだ末に両親は、富山市にある自立支援施設「はぐれ雲」に息子を預けることに。
引きこもりの原因はなんなのか?無気力な息子を見ながら、両親は「何がいけなかったのか?」と自問自答する日々…
はい、いわゆる引きこもりが社会復帰を目指して頑張る系の内容ですね。
今回の主人公は、昼夜逆転の引きこもりになってしまったキタノ ヨウヘイくん(24歳)です。そんな彼のことを見かねた両親が、彼を自立支援施設に入寮させるところから番組が始まります。
結論から言いますと、ヨウヘイくんの父親が厳格過ぎたことと、母親も過保護過ぎたという、非常にアンバランスな家庭環境に全ての原因があったと考えています。
父親はヨウヘイくんに対して、自分の価値観をひたすら押し付け、母親はヨウヘイくんのことを過度に心配し、本来ヨウヘイくんが経験すべきことまで全て摘み取ってきたのです。
そんな父母から板挟みにされ続けたヨウヘイくんは、次第に学習性無力感のような状態に陥ってしまい、そのまま昼夜逆転の引きこもりになったという感じですね。
では、具体的に見ていきましょうか。
キタノ ヨウヘイくんについて
性格としては完全に受け身な印象でした。趣味にしろ仕事にしろ、自主的に何も行動を起こせないというのがひしひし伝わってきました。
もしかすると発達障害気質な部分もあったのかもしれません。それかニートの才能があったのかも…🤔
中学時代はトップクラスの成績ではありましたが、料理や掃除といった家事は全て過保護な母親に任せきりというのもあり、入寮するまではまともにこなした経験がありませんでした。
1年にも及ぶ昼夜逆転の引きこもり生活の末、「自立支援施設 はぐれ雲」にやってきたのです。
自立支援施設 はぐれ雲における、ヨウヘイくんの共同生活
自立支援施設と聞くと、ワンステップ伊藤学校や戸塚ヨットスクールのようなものを想像してしまうのですが、少なくともこの「自立支援施設 はぐれ雲」は、まともな運営をしているように思います。
入寮者は、中学生から40代までの男女17人となっております。
共同生活ということで、料理や掃除といった家事はもちろん、山奥ということもあり農作業も手伝うことになります。
しかしヨウヘイくんの生活態度は劣悪さを極めていました。
入寮から2週間以上経っても昼夜逆転が治らず、毎日寮長の奥さんに起こされたり、食器洗いについても、洗剤を付けた食器を放り投げるなど、自暴自棄になっているようなシーンもありました。
その一方で、他の入寮者は皆ベテランでした。家事や農作業もテキパキこなし、不器用なヨウヘイくんにアドバイスもしていました。
キタノ ヨウヘイくんの両親について
父親は銀行員として働き、母親は専業主婦(?)として家事を切り盛りしていました。
一見すると普通の家庭ですが、父親はかなり厳格でした。
「子どもの成長過程の中で、強い父親像はあるべき」という考えの元、父親は息子のヨウヘイくんに厳しく教育していました。「一人で生きていけるだけの一人前の大人」になってもらうために。
ヨウヘイくんが中学時代にトップクラスの成績を取れたのも、そんな父親の厳しい教育の賜物です。
しかし当時のヨウヘイくんが勉強に打ち込んだのは、厳格な父親という圧力から少しでも逃れるためではないかと僕は思ってしまうのです。
番組を見ている限り、ヨウヘイくんは怠惰な人間です。
怠惰な人間というのは、自分から行動したり努力することが一切できない生き物です。こういった人間は、周囲の「やれよ、やらなきゃどうなるか分かってんだろうな?」という圧力から逃げるために、行動や努力を余儀なくされるだけなのであって、決して自分の意思で動くわけではないのです。
今までは父親の圧力で動かされてきたヨウヘイくんですが、大学に入った途端、自分を無理やり動かしていた糸のようなものが切れたのでしょう。
「自分が何をしたいのか分からなくなった」
「大学に行く意味がない」
番組内でそういう発言をしていることから分かる通り、気がつけばヨウヘイくんは父親の操り人形になっていたのだと思います。
その一方で、母親はヨウヘイくんに対して過保護でした。学校の勉強以外に生きていくのに必要なスキルを一切教えてきませんでした。ヨウヘイくんが入寮してから家事ができなかったのはそのためです。
ヨウヘイくんは厳格な父親と過保護な母親、一体どちらを信じたらいいのか分からなくなってしまったのでしょう。いろんな迷いの中でヨウヘイくんの心が消耗してしまった結果、1年にも及ぶ昼夜逆転の引きこもりになってしまったのでした。
ヨウヘイくんはどうなったか…
番組内ではアルバイトを紹介されたと同時に、復学することが決まりました。就職活動の準備も始め、自立に向けて動き出していました。
彼の引きこもり生活はここで一旦終わりを迎えたわけですが、両親と和解に至っていないこと、周囲の圧力がないと力を発揮できない性格を考慮すると、何かの拍子にまた引きこもり生活に戻ってしまうことでしょう。
まとめ
「一人で生きていけるだけの一人前の大人」というのは、どの親も子どもに望んでいることの一つであると思います。それ自体は否定する気はありません。
しかしそれを無理やり押し付けられるとなると、子どもの方はたまったものではないでしょう。
ヨウヘイくんの父親は、ヨウヘイくんを厳しく教育していると見せかけて「一人で生きていけるだけの一人前の大人」という価値観を一方的に押し付けていたに過ぎなかったわけです。
どんな教育をしたとしても、子どもは親の思い通りに決して育たないという教訓を、ヨウヘイくんの父親は身をもって学べたことでしょう。
雑感
この発達障害もどきとキタノ ヨウヘイくんは結構似ている部分があります。
受け身な性格と何事も能動的にこなす意欲がなく、周囲からの圧力で嫌々ながら力を発揮しているところがとてもよく似ていると思いました。